オヤジブログNo.133 - 説明書で楽しむSWSキットの醍醐味:帝国海軍局地戦闘機 震電 その1
掲載日:2023.12.06

説明書で楽しむSWSキットの醍醐味
帝国海軍局地戦闘機 震電 その1

 いよいよここ京都に、晩秋を告げるかのように山々も紅葉の装いを深めてきました。

SWS兄弟の皆さんはいかがお過ごしでしょうか。
 コロナ騒動もようやくひと段落し、京都にはまた世界中からの観光客が押し寄せてきて、有名観光地は人の波でいっぱいです。

 さて今回は造形村SWSキットの第一弾である帝国海軍局地戦闘機「震電」を取り上げてみました。 なにぶん発売が10年も前のキットです。 故にあちこちに未熟さと申しますか、希望と現実の間で揺れ動いていた当時の造形村の実力がかいま見えてきて、顔を赤らめながらのブログとなりました。

 もし皆さんがこのブログを見て、震電の工作にやる気と意欲が湧いてきたなら、キット内容の未熟さや不具合などがありましても、どうか、まだまだ造形村が発展途上であったと思し召しの上、寛大な心と慈悲のお気持ちで、笑って黎明期のメーカーの苦悩と未熟さと、そして七転八倒までを噛み締めて楽しんでいただければ幸いです。

 尚、すでに多くのモデラーの皆さんが、このキットをこともなげに易々と組み立ててこられたかと思うと、改めて感謝と喜びに頭が下がる思いです。
 造形村はこのキットから多くのことを学び、吸収し、さまざまなことを今も尚、学習し続けています。
 どうかこれからも大きく寛大な心と、モデラーとしての好奇心をもってご声援をいただきますよう心からお願いいたします。


造形村SWSキットの原点
全てはここから始まった!

帝国海軍局地戦闘機 「震電」

▋懐かしいこのパッケージにて造形村SWSはスタートいたしました。
帝都東京の空に乱舞するB-29の大編隊を前に、果敢に挑みかかる「震電」の姿は多くの航空機プロモデラー達から絶賛の声をもって迎えられました。
コレクションをしていただいた皆さんありがとう~~

▋当時はキットランナーが銀色とライトグレー、黒、そして透明パーツの四種類に分かれていました。これは素組であっても、震電の機体構造や迫力などをそのまま味わえるのでは、との思いからこのような色味のパーツとしていました。 またキャノピーの塗り分け用マスキングも付属させて、面倒な塗り分けを少しでも軽減しようとの試みも投入しました。 デカールの意匠は、当時の帝国海軍機の標準的な塗装を想定したものです。
実戦には間に合わなかった震電です。 あなた好みの塗装で迫るのも一興ですね。

▋震電に寄せる日本の航空機モデラーの心情には、ある種言葉では言い尽くせない慕情の様なものがあり、熱くこの機体への憧れや熱望感が長く語られてきました。 ひとたびこれが蒼空に舞い上がるや、目にも止まらぬその飛翔能力を活かし、敵機B-29を片っ端から粉砕しまくってしまう。
 これさえあれば。この機体さえ十分な数が揃えば・・・・。 儚い夢の様な気持ちが今も日本機モデラーの心を熱くしてしまいます。

▋悲願の2000馬力級エンジンがもしも実現し、これまた当時の常識を超える30ミリ機関銃を4挺も搭載して、はるか上空から空の超要塞を一撃で屠りさるその姿は、まさに「震電」という斬新にして魔性の姿をした、帝国海軍戦闘機最後の幻影でした。

▋さあ、エンジンの組み立てです。
すでにもうこの段階にて、初期発売の商品につきものの消化不良という難点が露呈してしまいます。なにしろ説明書の図の通りにパーツのダボ穴が見つからないのです。「あれ?」と戸惑いながら私もあなたも、あれこれと今までの経験に基づいて、収まりどころを探しまわることになります。
 なんとかトライを繰り返すと、パーツのモールドと、やろうとすることが見えてきて、ついにシリンダーブロックが完成します。 吸気管、排気管、そしてさまざまな周辺機器も同様にダボ穴が不明瞭で幾度かの試みの末、なんとか収まりがついてゆくという、なんともはや困ったキットではありまする。 それでもこの種のエンジンにくわしいあなたなら朝飯前ということかも知れませんね。 ここで挫けてはなりませんぞ。 難攻不落の工作はまだまだこれからなのですから。

▋こうしてパーツランナーを見るだけなら、ふつ~のキットなのですが・・・・。
またベテランモデラーならば、なんてことはない工作なのでしょうが・・・。

工作に入る前に、説明書10ページの完成写真を参考に納得のゆくまで見ます。
 そして「A-15、A-16、B-15、B-14」と「D-16」と「A-5」の工作と、20ページのエンジン搭載工作を何度も確認して工作を進行させるのがコツといえばコツといったところでしょうか。
 きっとこのキットを組み立てたことのあるあなたなら頷いてくださるでしょう。

▋説明書のイラストだけをなんとなく眺めていた時は「こんなの楽勝じゃい。」とたかをくくっていたのですが、どっこい工作にかかるや否や、「はう~」「ひょ~」などというため息が連発。
なにしろパーツの裏表が不明瞭、接着位置も不明瞭、そして説明書の工作指示も不明瞭なのですから、これはもうパズルを説く様な時間の始まりです。

特に注意は8ページ「A-15、A-16、B-15、B-14」という延長軸覆の上下が不明瞭なところです。
これは9ページ「D-16」と「A-5」と組み合わせられてエンジン本体と合体され、エンジンマウントで機体後部に搭載されるのですが、そのマウントに合体するための接合穴が正しい位置に来ていなければ、エンジン部分全体を胴体に乗せることができないのです。

この説明書の8ページ、9ページでの工作の前に、10ページのエンジン完成写真と20ページのエンジン搭載工作を何度も照らし合わせながら、エンジン本体の上下を正しく工作しなければなりません。
もしもこのキットを何機も組み立てた人なら、このことは何ということもない事でしょうが初めてこのキットのこの工程に来た人は相当悩んでしまうことになります。
 初期開発のキットとはいえ、まずここで大きな減点要素が出てしまいました。

▋エンジンのこの完成写真は説明書の始めのページに載せておくべきでしょうね。
エンジン本体から強制空冷ファンまでの延長軸の上部の前後にある直線のモールドが直上にきていなければ、エンジンマウントが正しい位置に取り付けられません。この写真を参考に、正しい角度で工作を進める必要があります。
 今思うとこの説明書でパーツのモールドを頼りに、難なく完成されてきた多くのモデラーに改めて賞賛と感謝の言葉を送りたいと思います。
 ありがとう~~そしてお疲れ様でした。

▋延長軸覆の上部にある直線モールドに注意。 これが画像のようなハッチとの位置関係で直上に向いていなければ、延長軸の下側にある接合穴にエンジンマウントが接着できません。

▋エンジンを下から見たところです。 エンジン左右には「オイルクーラー」が付属します。
またエンジンからでた排気は、強制ファンで機体後部から機外に排出されます。いずれの工作も後半の重要な作業となります。 ピタリと機体に収まるように入念な調整が要求されます。

▋この強馬力の、しかも空冷エンジンをいかにコンパクトに、かつバランスを取りながら搭載するのかという当時の九州飛行機の苦心の跡が垣間見えるレイアウトにご注目を。

▋ちょいとお先にプロペラを装着してみました。
震電は当時の帝国海軍機には珍しい6枚プロペラを採用。
これが今日まで日本機ファンの心を捉えて離さない一つの要因となっています。これが発動したら一体どんな爆音を周囲に轟かせていたのでしょうね。

▋強制空冷ファンもしっかり再現されています。
あなたの航空機コレクションに、この「震電」という変わった容姿を持つ帝国海軍戦闘機が加わることで、より一層の広がりと深み、そしてユニークさが表現されることでしょう。
 造形村SWSの第一弾として、航空機のスケールモデル世界に送り出されたこの記念すべき航空機キットを是非完成させてくださいね。

▋エンジンに比べ、コックピットの工作はあっけないほどの短時間で完成してしまいます。
なにしろ実機の取材も不可、また実戦の記録や写真もほとんどない状態からのモデル化です。
スミソニアン航空機博物館からの取材許可はいただけたものの、機体は分割され、エンジンも、また主翼や尾翼もかろうじてバラバラに残存している状態です。
 造形村開発陣は何日も泊まり込んでの取材で、やっとここまでのキットにたどり着いたのでした。

▋造形村キットの第一弾らしく、やっとここまでにまとめることができたという一枚。
最新作の1/32 Fw 190 と比較してモールドも甘く、時間の流れが見える様な仕上がりとなっています。 ただ、航空機の再現に燃える様な熱情はこのときからもメラメラと音をたてて続いていることが伺えますが、皆さんの目にはどう映っていることでしょう。

▋さて、ここからは機体の組み立て工作に入ってゆきます。
ここはパーツのバリやヒケをヤスリや「プラかんな」で丁寧に取り去る加工が主になります。一点注意は、説明書14ページの中程のB-23とB-24が左右逆に間違いやすいので、しっかりと仮組みをして確認してくださいね。
 また説明書15ページの「D-38、D-18、D-31」の機銃庫センターフレームを組み立て、十分に乾燥させたら、P-24の「H-5とH-6」の機銃カバーが綺麗に収まるかどうかとの確認工作が必要です。
 このカバーの組み付けが微妙に左右に開いておれば、機体との間に隙間が生じます。
その場合はセンターフレームの上部を少し削り落とし、カバーが隙間なくつけられるように工作が必要となります。

 説明書P-24の「機首カバー」と「胴体下部」、そして「センターフレーム」の収まりを何度も確認しながらの工作となります。ここが綺麗に決まると震電の精悍さが一層際立ちますぞ。

▋主要構造物と、コックピット周辺、そしてエンジンの一部がまとめられた「Dランナー」です。
主車輪のホイールも見えます。 この裏表のモールドにも注意です。

▋ちょっと工作を進めてみました。
主桁と主要構造物が一体成型されていて、これだけでも「震電」のユニークさが見て取れますね。
機首に4挺もの30ミリ機関銃を集めるという、これまでの帝国海軍機には見られない超強力な武装が何よりこの航空機の真髄を物語ります。

 もしもこの機体が・・・・もしも、もしも・・・・。

 今もなお、架空戦記の中に颯爽と出現し、切り裂く空気に両翼の日の丸を輝かせながら去ってゆく「震電」という奇妙な戦闘機。

 あなたのコレクションにふさわしい一機がここにあります。

みなさん つくづく
造形村の無謀さに驚かれたでしょう!

10年前、造形村という無名な弱小メーカーが突如日本に誕生いたしました。
 世界中に先輩プラモメーカーがひしめくように存在する、航空機のスケールモデルの世界に、いきなり、しかも1/32という大きなスケールと内部構造までを再現するという無謀な試みでデビューしたのですから、当時はモデラーの皆さんも随分驚かれたことでしょう。
 それも今ではもう遠い思い出となってしまいました。

 今こうして造形村が存続してこられたのも、この「震電」や「Ta 152」など、たとえそれが未熟なキットでも、未来の飛躍を信じて応援していただいた多くのモデラーの皆様がいてくれたおかげです。
 造形村メンバーを代表して心よりお礼を申しあげます。

 次回のブログでは
機関銃とエンジンの搭載。 そして一気に最終組み立て工程に突入してまいります。

どうかもしもお手持ちのキットコレクションの中にこのキットがある方は、このブログをきっかけに、造形村の始まりの始まりたる第一弾に挑戦していただければ嬉しいです。

 では次回のブログにて!

造形村 代表 重田英行


嬉しい写真と便りが届きました!!

 早くも「1/32 Fw 190」の素晴らしい完成写真をお送りくださったのは、名古屋市に在住の大先輩モデラーである「山森 力」さんです。
 シュネル機を忠実に、かつ美しく再現されたその腕前は脱帽もの!!
コックピットもBMWエンジンも見事に再現されており、実に男前のフォッケウルフに仕上げられています。
 貴重な作品写真と、励ましのお言葉に溢れたお手紙までありがとうございます~~~


そしてもう一つ
遠くノルウェイから嬉しいメールが届きました。
ダニー シュルツさんありがとう!

造形村開発チームの皆様

「おめでとう、そして、ありがとう!」とまずは心から伝えたい。このキットを9年間待った甲斐がありました! はっきりと言えます。このキットは今までに世に出たFw 190キットの中で最も正確なキットだと思います。オプションがいくつもあって、数々の素晴らしい見事なまでのパーツ。閉じた状態 / 実機通り作動して 広く開いた状態のキャノピーはもちろん、いろいろな車輪、武器、着陸装置、冷却フラップなど...。ただただ驚かされました。

皆さんの努力の賜物ですね!!!

ワインを片手にキットの箱を開けましたが、何の欠点もミスを見つかりませんでした。配送から、梱包、アートワーク、パーツに至るまで、細心の注意を払った指示があったのは言うまでもない! ああ、皆さんは素晴らしい仕事を成し遂げた。

これぞFw 190キットだ! RevellやEduardのよりももっとすごい。私は予約注文で73番を手に入れることができて本当に良かったと思います。拡大鏡でパーツを眺めているだけでも楽しいです。

繰り返しますが、最高の出来です。

この素晴らしいキットに、今後もっと多くの種類で出てくることを楽しみにしています。

末筆ながら皆様の今後の成功と健康、そして喜びをお祈り申し上げます。設計・研究チームに心から敬意を表します。本当にあっぱれです!

敬具

ダニー シュルツ


Dear Zoukei-Mura-Team,

I have to say: CONGRATULATION AND THANK YOU! This kit was worth waiting 9 years!!!! Definite. This seems to be the utmost correct Fw 190 kit ever on the market. Multiple options and a billion of wonderful and stunning parts. Canopies closed/ wide and open/ hinged as well as different wheels, weapons, landing gears, cooling flaps aso... It just blew me.

Guys this is some effort!!!

I could not find a single flaw or mistake so far as I was having a glass of wine when unpacking. From delivery, packing, artwork, and parts not to name the utmost meticulous instruction! Wow. What a job you have accomplished.

This is THE Fw 190 kit! Revell and Eduard come after in named sequence. I am so glad I had the opportunity to receive No.73 from pre-order and what a joy it has been just to look at the parts with a magnifier and let it sink in.

Again this top notch.

I am looking forward hearing from more types of this wonderful construction.

Let me close by wishing you lots of success, health and joy for the future. My deepest respect towards the design and research team. VERY WELL DONE!

Best regards

Danny Schulz


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