なぜ双発型ではなく串型(直列)なのか?
SWSキットを組めば分かるドルニエ設計の妙にご注目!
SWSキットでは、米スミソニアン博物館に唯一現存する実機を徹底取材。ドルニエ設計の核心に迫ります。前後にエンジンを搭載することで外観を特徴付け、最速レシプロ機たらしめた串型配列の全貌とは。なぜ多くの大型機のように左右の主翼に懸架する双発型(並列)ではなく胴体内での串型(直列)なのか。前後に配置されたDB 603エンジンと、そこを貫通するMK 103モーターカノン。脚式の頑強なランディングギア。肉厚の主翼を支える特殊なボックス構造の主桁など。この機体がなぜこのような奇妙な外観形状をしているのか。なぜこのような機体が激化を増す大戦末期のただ中に求められたのか。SWSキットを組めばその全てが分かります。これぞ模型による本物の飛行機の再現。世界中の飛行機マニアが求めた新しいスケールモデル世界をじっくりとご堪能ください。
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- 1.機体選定
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日々悪化する戦況、本国最深部まで容赦なく侵入してくる敵重爆撃機。敗戦の途を辿るドイツ軍に起死回生のチャンスをもたらすには、敵重要拠点をいかに効率的に制圧できるかにかかっている。そのような状況下、ドイツ空軍の要求する「制空権のない敵地へと高速で侵入し爆撃しうる双発機」という仕様に対し、串型配列機の勅許を持つドルニエ社が出した解答とは。開発の途上で爆撃機から多用途重戦闘機へと変貌を遂げ、骨太の胴体前後にDB 603 Aを搭載して驚異的な推力で高速戦闘を行い、ボックス状の特徴的かつ頑丈な主桁構造を持つ特徴的なドイツ空軍双発戦闘機をSWSで完全再現いたします。
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- 2.エンジン
- ▋DB 603 A
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DB 603はダイムラー・ベンツ社製、液冷倒立V型12気筒エンジンである。設計の基となったDB 601エンジンは燃料直接噴射ポンプの搭載やプロペラ軸に機銃が通せる構造、無段変速の過給機、ローラーベアリングの多用など、高度で複雑な機構を多数採用している。これらの要素は製造を困難にする要素でもあったが、同社の高度な工作技術で克服、大戦前半にはライバル機に対する優位を保った。排気量は44,510cc、離昇出力1,750hp/2,450rpmとなっている。同エンジンを前後に2基串型配置し、高速で制空権のない敵地へと侵入して爆撃を行う力の源となった。
形式:過給機付き液冷倒立V型12気筒
ボア×ストローク:162mm×180mm
排気量:44.52ℓ
全長:2,610.5mm
直径:830mm
過給機:遠心式スーパーチャージャー
出力
離昇出力:1,287kw(1,750PS)
巡航出力:1,111kw(1,510PS)
圧縮比:7.5:1 left block、7.3:1 right block
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- 3.プロペラ
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前後いずれもVDMプロペラを採用。形状や直径が前後ともに異なるため、レシプロ機の命とも言えるプロペラの実機取材はいつも以上に念入りに行われた。前方は牽引プロペラで直径3.5m。付け根の後縁部分が断ち切ったような平面形状をしている。後方は推進プロペラで直径3.3m、プロペラシャフト延長軸によってエンジンと連結。延長軸は途中二箇所で分割され、継手部分はギアカップリング式になっており、機体のねじれ等から軸中心が多少ずれても融通が利く仕掛けになっている。この仕掛けの採用により、共振や破損を防ぐ狙いがあったと考えられる。ちなみに実機マニュアルにはプロペラのことを「luftschraube(直訳すると「空気ネジ」)」と記している。
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- 4.コックピット
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Do 335の操縦席は射出座席となっており、緊急脱出レバーを操作すると射出される。ただし、後部プロペラに巻き込まれないよう、まず先にキャノピー投棄レバーで胴体とキャノピーの連結を外し、後部プロペラとともに投棄する必要がある。射出座席は背面に装備した空気圧で作動するシリンダーによって射出。その際パイロットはシート前方に突き出たバーに足を載せる格好となる。ヘッドレスト背後には射手時の姿勢安定用のパラシュートが装備され、空中に放り出された後は自らが装備するパラシュートで降下したようだ。操縦桿のグリップ部はHe 219と共通部品と思われ、照準器は爆撃にも対応した「Revi 16 D」を採用。左コンソールにはスロットルレバーや燃料供給レバーなどが並び、右コンソールには爆弾のリリースレバー並びに、「FuG 16 ZY」のレシーバー操作面も並んでいる。このようにSWSではパイロットの仕事場であるコックピット内部が詳細に再現されているのだ。
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- 5.ランディングギア
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Do 335の降着装置は後方にもエンジンがあるため前脚と主脚の3点式となる。前脚は油圧シリンダーによる後方折り畳み式で、ステアリング機構を持つ。パイプの曲げ加工によるフレームと板金部品との溶接による頑丈な泥除けも見事再現されている。主脚柱も油圧シリンダーによって側方(胴体中央側)に折り畳まれる。主脚カバーはフォーク部を避けるために有機的な張り出しが設けられ、閉じた際には大型の主輪を収納するために膨らんだ主脚収納庫扉とつながる形状となっている。またSWSキットでは、両脚柱ともにしっかりと角度と強度をもって固定できるよう配慮された基部形状として設計されている。もうこれで脚柱の角度や強度に悩まされることはないだろう。
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- 6.主翼
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肉厚な主翼の取付角は3度。胴体との取付け部から3,400mmの位置にある14番リブから翼端までのパートの迎え角1.5度。捻り下げは胴体との取付け位置から3,400mmの位置までの間で与えられており、その角度は1.5度。主翼後縁を基準に捻りを与えている設計のようで、後縁は一直線。上半角も後縁で測られており、角度は6度である。前縁の後退角は13度で、正面から見ると捻り下げと内翼と外翼の翼型変化により、外翼前縁が跳ね上がって見える。主翼桁はHe 219やFw 190シリーズのように一本の主桁として頑丈な構造材があるのではなく、胴体後部の延長軸にも影響を与えないようボックス構造で強度を持たせているのも本機の特徴だ。実機ではボックス構造を成す上下の板は外板として主翼の上下面に露出する。キットでは内部フレームのみで組み立てた場合にも、そのボックス構造であることの意味の面白さが伝わるよう上面のみあらかじめ主翼桁に板状の蓋をしてあり、あたかも生産中の機体であるかのような再現も可能となっている。
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- 7.内部構造
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前方エンジンのエンジン架は、上下に見える溶接痕から最中構造の中空式と想像される。幾何学的デザインながらも柔らかい外観形状をしている。また冷却方法については上部にオイルクーラーが合体した環状ラジエーターを機首に配置。Do 335が一見空冷エンジン搭載機に見えるのもそのためである。後方エンジンのエンジン架は、エンジン側面に連結される部分とギアボックスに連結される部分の二箇所で支える仕組みとなっている。後にA-6型などに搭載予定だった「DB 603 E」ではギアハウジングが改良され直接エンジン架が取り付け可能となるため、「DB 603 A」で必要なエンジン架取り付け用のリング状の継手が不要となる。後方エンジンの冷却方法は機体下部にラジエーターが配置、その後方にオイルクーラーが設置されている。ラジエーターダクトは底面から空気を取り入れてラジエーターを冷やし、尾部へと放出する導風管であり、ちょうど米軍機「P-51D」のそれと類似している。
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- 8.武装
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主武装は機首上面のマウザー社製MG 151/20mm機銃と、エンジンの中心部を貫通して配されるラインメタル社製MK 103/30mm機関砲。いわゆる「モーターカノン」だ。各武装へのアクセスハッチは機首右舷にのみ存在する。そこから右舷側のみ取り外し可能なMG 151のマガジンを外して、MK 103へと給弾する。それぞれの空薬莢の排莢スペースは機首内部に集中し、空薬莢は帰投するまで投棄せず保管しておく仕組みとなっている。本機が後部にもプロペラを装備しているための配慮であると考えられる。また、本機は設計当初「戦闘爆撃機」として開発されていたことから、胴体中央腹部付近に爆弾庫を有する。本キットでは先行量産型である「A-0」としての再現なので弾頭は装填していないが、内部構造と合わせて見どころのひとつとなっている。
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- 9.外観形状
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同じ双発機でもHe 219とは異なり骨太な胴体と肉厚な主翼を持つDo 335は、機体の前後にエンジン2基を配置する「双発串型」という特殊なエンジンレイアウトを採用。合わせて主翼と上下に1枚ずつ配置された垂直尾翼というシルエットから「プファイル」や「アロー」の愛称(ともに意味は「矢」)で呼ばれている。また、側面からの全体的なシルエットは、先細りに見える機首とコックピット後方のエンジンとその下部にあるダクトによる胴体の膨らみから「オオアリクイ」にも見えるため一部では「アマイゼンベア」とも呼ばれている。降着装置は後方プロペラのため前脚3点式となり、下部垂直尾翼には接地対策としてのスキッドがある。3点式の脚柱はいずれも長く頑丈で、着陸時に地上から見上げる機体は恐ろしく巨大で、見る者に圧倒的な威圧感を与える。この実に特徴的な外観を持つDo 335を、スミソニアンにある実機取材によってSWSスタンダードで完全再現。大戦末期におけるドイツ軍の底力をとくとご覧いただきたい!
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造形村コンセプトノート
SWS No.Ⅷ Dornier Do 335 A-0 Pfeil
- ページ数:カラー64P
- 対応言語:日英両対応
- 価格:1,100円(税込)本体価格:1,000円
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